里山などで捕獲でき、カブトムシと並び身近な甲虫として親しまれてきたノコギリクワガタ。野生個体の採取・捕獲を通じて子供でも飼育でき、都市部でも比較的安価に購入できる最も有名なクワガタと言えます。オオクワガタや外国産クワガタブームによる飼育用品・技術の進化により、累代飼育も一昔前と比べ容易になりました。

クワガタ入門種としてもオススメで、初心者でもコツを掴めば簡単に飼う事ができ、繁殖にも持ち込めます。クワガタ飼育の入り口として本種を大切に飼い込み基礎を学んだ上で、他の国産種・外国産種の飼育に繋げて行きましょう。

それではノコギリクワガタの特徴や飼育方法などを説明していきます。

ノコギリクワガタの特徴

ノコギリクワガタは沖縄県を除く全国各地に分布します。北海道から屋久島まで日本列島を横断する様に、その生息が確認されています。

分類はカブトムシと同じコウチュウ目であり、クワガタムシ科ノコギリクワガタ属に分類されます。

ノコギリクワガタの最大の特徴は、名前の通りノコギリ状の歯を持っていることと、色合いが少し赤みを帯びていることですね。

しかし、ノコギリクワガタといっても、国内だけで計6種類の亜種から構成されています。
まずは一般的に認知されているノコギリクワガタを見てみましょう。

ノコギリクワガタ

国内各地に多く生息しており、オスの大顎内の内歯がまるでノコギリの様に数多く並び付くことから、この名前が命名されました。

他の亜種群と区別するためにクワガタ飼育者の間では「国産ノコギリ」「本土ノコギリ」という俗称も持ちます。

その住処も幅広く、平地から山地にかけての広葉樹林地帯・郊外の小規模林・里山までに及ぶ事もあります。

高山地帯にはあまり見られず、時折家の光に向かい飛んでくるほど身近なクワガタ種です。

眼球に一本の線がある

クワガタの顔をじっくり観察される方は少ないと思いますが、よく見ると眼球に一本の突出している線のようなモノが確認できます。

ノコギリクワガタ(オス)の顎の大きさは個体によって全然違う

ノコギリクワガタのオスは大きさによって顎の発達度合いに変化があります。以下の33mmの個体は、顎は湾曲しておらず、ほとんど真っすぐに伸びています。反対に60mmの個体は顎が大きく湾曲しているのが分かります。

ノコギリクワガタは6種存在する?

特徴の冒頭でも言ったように、ノコギリクワガタといっても、複数種類が確認されています。

あまり知られていませんが、「ノコギリクワガタ」を原名亜種とし、国内だけで計6種類の亜種から構成されます。他の5亜種は離島などに局所的に分布するので、目にする機会の少なさが知名度の低さに繋がるのでしょう。

それぞれ「クロシマノコギリクワガタ」「ミシマイオウノコギリクワガタ」「クチノエラブノコギリクワガタ」「ミヤケノコギリクワガタ(ノコギリクワガタ伊豆諸島南部亜種)」「ヤクシマノコギリクワガタ」という名前を持ち、種小名から分かる様に生息地(生息諸島)の頭文字を取り命名されています。

普段見慣れない他の5亜種を紹介していきます。

クロシマノコギリクワガタ

鹿児島県鹿児島郡三島村に位置する「黒島」にのみ生息するノコギリクワガタです。黒島はごく小さな有人島ですが600mもの高低差を持ち、その海岸から山頂まで豊富な植物相を持つため、島全体が天然記念物に指定されています。

クロシマノコギリクワガタは特殊植物相・隔絶された孤島で進化したため、ノコギリクワガタと比べ大顎が小型化し短く強く湾曲しているのが特徴です。また、体色も赤みがかる光沢を持っています。

ミシマイオウノコギリクワガタ

こちらも鹿児島県鹿児島郡三島村に属する「硫黄島」にのみ生息する固有亜種です。大顎が短く太さを増すことで他亜種との区別がつきます。写真からは分かりにくいのですが頭部・胸部・腹部を繋ぐ“付節”がかなり細長くなっているのが特徴です。

クチノエラブノコギリクワガタ

鹿児島県熊毛郡屋久島町の口永良部島の固有亜種です。屋久島・種子島と共に大隈諸島を作る本島ですが、今までの亜種群の様に鹿児島以南の島々は非常に多くの亜種を有します。

亜種群はかなりの共通点がありますが、本種は原名亜種ノコギリクワガタと比べて、大顎が短く直線的な形状になっているのが特徴です。

ヤクシマノコギリクワガタ

これまでの亜種と比べてかなり見分けやすい種が“ヤクシマノコギリクワガタ”です。名前の通り屋久島に生息し、深みのある赤褐色・ゴツゴツとした突起が節々に発現します。

幅が広い楕円形をしており、上から見ると寸詰まりの様な体型です。
亜種の中でも群を抜き、特徴的なノコギリクワガタです。

ミヤケノコギリクワガタ

これまでの鹿児島以南の諸島群以外で唯一の亜種が本種「ミヤケノコギリクワガタ」です。

東京都の伊豆七島、新島・式根島・神津島・三宅島・御蔵島の5島に限定分布し、小型化する傾向を持ちます。

ノコギリクワガタ(原名亜種)の見分け方

ノコギリクワガタ♂
ノコギリクワガタ♀

ノコギリクワガタの6種類を紹介しましたが「ノコギリクワガタ(原名亜種):以下ノコギリクワガタ」はこれまでの説明通り、その生息地で簡単に判別できます。メジャーなノコギリクワガタ以外の5種類は隔絶された離島群に生息し、滅多に流通することもなく野外で目にすることもないでしょう。北海道・本州・四国・九州が国内生息地なので、里山や広葉樹林などで見つけられるのは確実にノコギリクワガタです。

本土群のノコギリクワガタも幼虫・蛹期間の長さで、大きさや色味も変わり必ずしもその特徴が共通するという訳ではありません。

体長はもちろん、大顎の大きさ・赤身や黒味の入り方など産地による差も楽しむことができるのが、ノコギリクワガタ飼育の楽しさの一つです。

ノコギリクワガタ幼虫の特徴・見分け方

(写真)ノコギリクワガタの幼虫

幼虫時の同定(オスメスの判別)は要所を抑えればすんなりと行えます。ノコギリクワガタは脱皮を繰り返し3齢幼虫まで育ちますが、この時が一番同定し易く、頭のサイズで雌雄を見分ける事ができます。

頭部が大きな幼虫が将来のオス個体で、小さなものがメスです。おそらく将来大顎になる幼虫原基(将来成虫になる部位)が頭部に発現するので、幼虫時でも差が見て取れるのでしょう。

1齢幼虫の時点でも判別可能ですが、前蛹前の3令幼虫の方がより見分けがつきやすいです。

ノコギリクワガタの習性や生態

ノコギリクワガタは低地や平地のなだらかな山地を好み、高山地帯で見かける事は稀です。この事から他のクワガタと上手く棲み分けができており、総個体数もとても安定しているクワガタです。

ノコギリクワガタは主に夜行性であり、自然界では広葉樹・照葉樹など樹液を出す樹林に依存し主食とします。闘争本能は強いのですが脚力や大顎の挟む力がオオクワガタやヒラタクワガタ・カブトムシに比べて弱いので、見かけによらず争いには負けてしまう事が多いんです。

ただ標高の低い山地や平地などで人間と共生する事も多く、活動地域の差でクワガタ内ではかなり優位な地位を占めています。

幼虫の期間が1年から3年とかなりバラつきがあり、成長や成熟には『積算温度』が深く関わります。

積算温度をざっくり説明すると、幼虫から蛹・蛹から羽化などに必要となるトータルの温度です(※例えですが、1日の平均気温が10℃必要で100日で幼虫から成虫になる昆虫がいたとします。その昆虫の幼虫から成虫になる積算温度は“10℃×100日=1000℃”が積算温度となる訳です)

この積算温度を人為的に低くして、幼虫を大きく育てる事もできます。日数はかかりますが、より大きなサイズのノコギリクワガタを狙う事もできますよ。

ノコギリクワガタの成虫の寿命は野生下では、約3ヶ月と非常に短命です。6月頃に蛹室から羽化し、9~10月頃にはその活動期を終えてしまいます。

夏場の活動期7~8月にかけてオス・メスは交尾をし、メスは幼虫の餌となる「立ち枯れした広葉樹」「倒木などの朽木やその周辺部(フレーク)」などの表面に大顎を使って穴を開け、産卵管で大きさ2〜3mmほどの小さな卵を一粒ずつ産み付けます。

産卵数は平均20個ほどで、産卵を終えたメスは産み付けた穴を丁寧に埋め戻します。産み付け場所の枯れ木は『木材腐朽菌』により分解が進んでおり、孵化した幼虫は木の腐りかけの部分を貪欲に食べて成長していくのです。

脚の間の「跗節」という器官に敏感な「感覚毛」を持ち、振動を感じると死んだふりをする事から、生息する木などを蹴り上げると落下して簡単に捕まえることができます。

キチンとした『遺伝子マッピング』

販売情報

-販売情報-

データ

ノコギリクワガタ♂
名称ノコギリクワガタ(原名亜種)
学名Prosopocoilus inclinatus inclinatus
難易度(成虫)★☆☆☆☆
難易度(産卵~幼虫)★★☆☆☆
力の強さ★★★☆☆
温度(推奨温度)室内無加温飼育が可能(30℃未満が成虫の適温)
大きさ(飼育ギネス)    (野外ギネス) オス(野外) メス(野外)(2015年:76.8mm) (不明:77.0mm) 24.2~76.8mm 19.5~41mm
成虫寿命(幼虫期間)3ヶ月(約1~3年)
値段500~700円(オスの方がやや高額)
成虫の活動時期6月~10月(約3ヶ月)
分布日本(北海道・本州・四国・九州・その他離島)
生息環境里山・雑木林・クヌギ林・コナラ林
採集方法蹴木採集・網採集・樹液採集・灯火採集

ノコギリクワガタの成虫の飼育方法

ノコギリクワガタの成虫の飼育はオスの単独飼育か、ペア飼育に留めましょう。ノコギリクワガタのオスはかなり好戦的な性格なので、他の昆虫はもちろんオス同士の同居も避けた方が無難です。

自然採取したノコギリクワガタは、そのほとんどが年内に寿命を迎えます。本来ノコギリクワガタは夜間に樹液やパートナーを求めて飛び廻り、元々のエネルギー消費が非常に強くなります。そのため短命になる個体が多くなります。

飼育下繁殖のノコギリクワガタは冬越しして、翌年も生き残ることがあります。冬場の加温は必要なく、無加温越冬の方がより長寿になる傾向を持ちます。

この様に野外種・繁殖種で寿命や越冬などに差が生じるので、手に入れたノコギリクワガタがどちらのものなのか?ショップなどで購入する際には確認しておきましょう。

成虫飼育のために用意するもの

ノコギリクワガタの飼育は国産カブトムシなど、他の甲虫と同じ方法で飼う事が可能です。用意する飼育器具や餌などもほぼ共通するので、他のクワガタ種やカブトムシなどの飼育経験があれば、使用していたものをそのまま流用することができます。

ノコギリクワガタ飼育の際に必要なものは以下の5点です。

  1. 飼育ケース(コバエシャッター・クリアスライダーケースの中~大型サイズが管理が楽です)
  2. クワガタ用マット
  3. 昆虫用ゼリー
  4. 登り木・転倒防止剤
  5. 昆虫ウォーター

それぞれについてノコギリクワガタの飼育方法と共に解説します。

飼育ケース(中~大型サイズ)

(写真)コバエシャッター大サイズ

飼育ケースはメンテナンス等の利便性が良い「プラケース」が最も適しています。一般のプラケースを甲虫様に改良した『クリアースライダー』『コバエシャッターケース』の2点がクワガタ飼育にベストでしょう。

なぜこれら2点が最適と言われているのでしょうか?

・ダニ・コバエの侵入・繁殖を防ぐ

ダニは成虫の腹板に密集し個体を弱らせ、気門に潜り込み窒息死させるケースがあります。コバエ(ショウジョウバエ)には害はないのですが、マットや室内が不衛生になり、細菌・微生物を持ち込んで二次感染を引き起こすので、シャットアウトした方が衛生的になります

・積み重ねられる

同サイズの飼育ケースは蓋と底部の凹凸で、ピッタリと組み合い上下に置くことができます。観察や日常メンテナンスがし易くなり、滅多な事でプラケースが崩れ落ちないこともかなりの利点です。

・セパレーターがある

基本的にペア飼育でも大きな問題は起こりませんが、もしもの時の予備的な装備として、同じケース内で隔離できるという事は大きなメリットです。

クワガタ専用のプラケースであり、他のプラケースとの値段も殆ど変らないので、個人的には『コバエシャッターケース』『クリアースライダーケース』の2点を強くお勧めします。

飼育ケースについて詳しくは→飼育ケースといったらこれ!管理の手間を減らすおすすめの飼育ケース

クワガタ用マット

クワガタ専用マットの一例です。

園芸用の腐葉土やオガクズでも成虫の飼育には問題がありませんが、クワガタ専用マットは保湿性の向上、ノコギリクワガタが好む腐敗気味の広葉樹林がベース・そしてダニやコバエの発生抑制など様々なメリットがあります。

繁殖を狙わない場合は浅く敷き詰める程度でも構いません。自然素材由来のものとなり、繁殖を狙いたい方はそのまま「産卵・幼虫用マット」を深く敷くとかなり効率が良くなります。

様々な成虫用マット・産卵育成用マットが市販されていますが、基本的は湿度保持・成虫を傷つけないもの・ダニやコバエの発生源にならなければ問題ありません。

個人の方が経営するお店で独自に配合したマットもあり、市販の量産品よりもそちらの方がかなり優秀な点が多く見られます。

マットは劣化するものです。排泄物や残餌で汚れてしまったり、スプレーしてもビショビショになり「だま」ができる様なら総取替えしましょう。

成虫用の床材について詳しくは→ダニやコバエの発生を防ぐおすすめの成虫用床材

昆虫用ゼリー

昆虫用ゼリー(ワイドサイズ)の一例です。

ゼリーカッターの一例です。

甲虫類の総合栄養食とも言えるのが昆虫用ゼリーです。冷蔵庫で不通に保管でき、かなり長持ちします。殆どのものが高カロリー・高タンパク質で、成長・発情促進や、卵・幼虫・蛹といったライフサイクルの安定にも繋がります。

注意点として「大顎」を持つ“ノコギリクワガタ”は普通の甲虫用ゼリーではカップのふちと、その大顎が邪魔し、餌を食べられないことがあります。

そのため「ワイドサイズ」という間口の広いゼリーカップや、ゼリーカッターなどで容器とゼリーそのものを分断して与えてあげて下さい。

昆虫用ゼリー以外も餌はありますが、スイカ・キュウリは水分が余りに多いので避けて下さい。他の果物類などや黒糖を煮詰めたものなども好みますが、その都度の手間が非常にかかるので、やはり“クワガタ用ゼリー”を主食にするのが最もコスパが大きいでしょう。

成虫のエサについて詳しくは→最適な成虫用エサはこれ!必要な栄養を補給できるおすすめのエサ

のぼり木や転倒防止材

餌台付きの転倒防止材

カブトムシの成虫と同じで、ノコギリクワガタも転倒するとなかなか自力で起き上がれません。そのまま放置すると必死に起き上がろうと著しく体力を消耗し、死んでしまうことさえあります。そのため取掛かりとなる“木の枝”や“樹皮”などをケース内に入れておきます。

野外採取でも構いませんが、写真の様にゼリーを入れる事の出来る「餌場兼転倒防止材」や消毒済みの「樹皮」「小枝」等も安価で販売されています。

昆虫ウォーター

昆虫用保湿スプレーの市販品の一例です。

ノコギリクワガタは6月頃の梅雨期に蛹室から地上に出ます。彼らは基本的に腐敗気味の朽木や枯れ木を好み、成虫までの生活をそこで送るので、腐敗を促進させるためには「保湿」が最も大切です。

成虫時も同じで、生活圏であるマットは湿度を保つ必要があります。甲虫類の飼育でマット湿度の目安に良く例えられるのが「ギュッと握り形が崩れない」状態です。

基本的には霧吹きや水道水を使っても構いませんが、専用用具である保湿スプレーを使った方が、安定した飼育に繋がるでしょう。

ノコギリクワガタの成虫飼育の注意点

ノコギリクワガタの飼育の注意点は「30℃を超えると弱る」「越冬は難しい」という点です。

30℃を超えると弱るので夏真っ盛りの酷暑は注意

ノコギリクワガタの野生個体は、地上に出てからの成虫期間が約3か月と短く、梅雨から初秋にかけて活動期となります。基本的には室温に合わせても構いませんが、30℃を超えると高温多湿状態になるので、みるみる弱ってしまいます。夏真っ盛りの酷暑時にはエアコンで20℃台をキープしましょう。

野外でも稀に越冬の可能性を持つ個体はいますが、その間樹液を出す木々は休眠状態に入ってしまうので、結局は餌不足で★になってしまいます。

越冬にはコンスタントな餌やりと20℃台の気温を常に維持すること

冬場の管理は成虫には必要ありません。かなり難しいですが越冬を試す場合、コンスタントな餌やり・20℃台の気温を常に維持し続ける必要があります。野外個体はなかなか困難で、自家繁殖した個体の方が越冬の可能性は僅かに高くなります。

野外では秋頃に蛹室内で羽化したノコギリクワガタはその内部で越冬します。これを『一時発生型(越冬後の活動個体)』と呼びます。飼育下でも室温飼育で繁殖する際は同じ行動を取ります。

また最近の地球温暖化の影響でしょうか?初夏(6月頃)に羽化する中でも成長速度が速いノコギリクワガタもおり、7~8月に地表に出る「二次発生型(早期活動個体)」という形態も近年見られます。

二次発生型は小型種が多いのですが、その寿命を存分に残しているので、かなり越冬向きのノコギリクワガタとも言えます。

ノコギリクワガタの繁殖方法

繁殖はオス・メスの同居から始めますが、気をつけないとその大顎でメスを襲うことがあります。メスがいじめられるようなら直ぐに隔離しましょう。繁殖を狙うには羽化したての6月ごろから1カ月ほど十分な餌を与えた状態から始めます。

この時期に「昆虫ゼリー」を始めとした高カロリー・栄養価の高い餌を与えるとより効果的です。7〜8月の産卵期に向けて、十分な個体に仕上げて下さい。

ノコギリクワガタの交尾は、一度行えば寿命が尽きるまで有精卵を産むことが可能です。交尾が確認でき次第、メス単独で育てましょう。

ノコギリクワガタの交尾方法

ノコギリクワガタの交尾方法には「同居交尾」「ハンドペアリング」の2つがあります。

  • 同居交尾
  • ハンドペアリング

理想は自然な交尾に持ち込む『同居交尾』です。ただ交尾の確認ができず、オスが成熟にまで達していないとメスを執拗に攻撃してしまう、デメリットがあります。

安全を求めるなら『ハンドペアリング』が最適です。成熟度や交尾確認ができるので、この二通りの方法を行ってみましょう。ハンドペアリングは基本、月に2回ほど行います。

『同居交尾』については説明の必要がありませんが『ハンドペアリング』の場合は少しだけコツが必要です。とは言え全く難しいものではなく、メスがしっかりと自分の体を支えられる交尾場(太い木の幹など)を用意し、その背中にオスをそっと乗せるだけです。無事交尾が確認できたら、このケースでもメスはすぐに隔離して下さい。

産卵セット作成に必要なもの

  • 産卵用ケース
  • 産卵用マット

交尾が確認できたらメスを『産卵用ケース』に移動します。本来は腐敗が進んだ朽木がベストですが、卵が取れなくなり管理がしにくくなるので避けるべきです。マットを使ってもメスは問題なく産卵してくれます。

クワガタ用産卵マットの一例

次に産卵用ケースですが、メスに卵を産み付けてもらうには、一般的に『クワガタ用産卵マット』を用います。とりあえずは卵の確保が必要なので、産み付けるのに適した培地なら何でも構いません。

この産卵マットに先ほど紹介した『昆虫用保湿スプレー』などで湿度を持たせて、産卵用ケースの底から数cmほど固く敷き詰めて下さい。更に二層になる様に、その上に“やや固め”に5~10cmほど、再度昆虫マットを敷き詰めたら産卵床の完成です。

後はメス個体を産卵ケースに入れ、卵を産むのを待つだけとなります。

→自分で取ってきた産卵材について

ノコギリクワガタの幼虫の飼育方法

ノコギリクワガタの幼虫はそのまま産卵ケースで孵化させましょう。その後1~2カ月経過したら、慎重にマットを掘り起し1齢幼虫を取り出します。安全を期すために2齢幼虫の段階で掘り起こしても良いでしょう。その間の餌はマットが補ってくれます。

幼虫飼育のために用意するもの

・産卵ケース(そのまま育てる場合)

・菌糸瓶(800cc以上のもの)

幼虫飼育には、そのまま「産卵ケース」で育てるか?菌糸瓶ケースに移し替えるか?2通りの方法があります。

『菌糸瓶』は枯れ木などにキノコ菌を植え付けて分解させ、幼虫が食べやすく…しかも栄養豊富にしたものです。もちろんマット飼育で継続し羽化まで持ち込めますが、巨大化させたい場合は一般的にこちらを使います。

マット飼育は幼虫の糞や吸水性が鈍ってきたら、その都度変えるようにして下さい。それ自体が餌なので世話をサボると途端に餓死してしまいます。マット飼育の場合は適切なマット交換を行えば、やがて蛹室を作り翌年6月頃には成虫が誕生するでしょう。温度は無加温で構いません。

菌糸瓶の場合では1齢幼虫以外は基本的に500~800cc以上のものを使いましょう。特に3齢幼虫時は狭すぎると暴れてしまい(“かき混ぜ”と呼びます)小型化するか、最悪死亡してしまう事もあるので、800cc以上の菌糸瓶が必須となります。

幼虫飼育のポイント

ノコギリクワガタの幼虫はその発育がかなりランダムで、蛹化・羽化に至るまで1~3年とかなり幅広い期間を持ちます。かなりレアケースですが卵の状態で越冬する場合もあるそうです。

そのため早急に死亡したと早合点しないで、じっくりと待ち続けることがポイントとなります。幼虫の時期は慎重に掘り起こして、その発達段階を見極めることができますが、蛹室を作ったら決して掘り起こしてはいけません。羽化不全や大顎・脚部の欠落に繋がってしまうのです。壁面から蛹室の様子を観察できることもあるので、気になるでしょうが放っておくしかありません。

無事成虫に羽化しても蛹室内で越冬するので、この際も気温が暖まる6月頃まで、ノコギリクワガタ自身に地表に出るタイミングを選んでもらいましょう。

ノコギリクワガタの幼虫は国産種なので温度に気を使うことはありませんが、菌糸瓶の場合「発酵」や「密閉度」が高いので、外気より2~3℃ほど高めの温度になることは頭に入れておいてください。

成長記録

産みつけられた卵。茶色に変色しつつあるので1齢幼虫の誕生間近である事が伺えます。

1回目の脱皮を終えた2齢幼虫。この時点ではそれほど大きな菌糸瓶は必要とはしません。

蛹化したオスとメスの個体です。同じ環境で育てても右のオス個体の方が発色が進んでおり、羽化間際という事が伺えます。

羽化からしばらく経ったノコギリクワガタ。園芸用のオアシスを用い人工蛹室で羽化させた個体です。羽化直後は翅に白みがかかります。

まとめ

ノコギリクワガタは国産入門種として最適であり、低地を好むため身近な里山など意外な場所に生息しています。もちろん安価で販売もされており、ショップではカブトムシと並び、夏の風物詩ともなっています。ノコギリクワガタの飼育を通し、ぜひ他の国内種…ひいては外国産クワガタ飼育へのステップアップとして見て下さい。

ギネス級個体を育てるためには

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